はじめに
Atomと言えば、原子ではなく、Githubの開発したテキストエディタですが、とうとう
その開発の中止が決定されたらしいですね。
えっ俺Atom使ってないしいいやって?私だって生粋のvim使いで、Atomなんて触った事もなければ、インストールをした事さえありません。
ぶっちゃけ言えば「これ以上分割できない物」の代名詞であるatomをエディタの名前として使うのは、物理学徒としても許し難いです。
なのでatomが開発中止?ざまぁと思う人も多いかもしれませんが、話はそう簡単なもんではございません。
少し付き合ってください。
MicrosoftとGithub
MicrosoftによるGithub買収は多くの人の記憶に新しいのではないのでしょうか。
当時沢山のOSS(オープンソースソフトウェア)が
Gitlabに鞍替えしましたね。
また、gitlabのCSSが
edgeで正しく表示されない
などのおわらいも発生しました。
ログアウトしてから再ログインするのに、toppageから直接ログインできず、ググってもできず、いろいろ探してやっと、signin→already have an accuont?からログインみたいな感じにやらないと再ログインできない事をしって、怒りのサポートメールを出したのを覚えています。ログインボタンをなくすとか気でも狂ってんのかと思いましたよ本当に。
後々twitterで検索してみると、同じように怒りのメールを書いた人が沢山いたようです。
とまぁ移行時に色々なグダグダがありました。ただググっても当時の情報が全くでてこないんですよね。あった事は思いだせるのに証拠が提出できない。
どなたか魚拓かwebarchiveとってたら教えてください。
まぁとにかく、マイクロソフトとかいう会社はOSSとはまるで無縁のパラダイムでソフトウェア開発を行なっていました。
利益のために独自規格をバリバリに盛り込んだ仕様、最初は無料で配布、業界のスタンダードにした後は有料で法外な料金をとり、
頻繁な意味のないアプデとその度に増える後方互換性のない規格。
そんな邪悪な事をやりつづけた会社が創業40年後にいきなりOSSの開発の総本山を買収なんてキナくさいと思う団体が多くいたのは当然ではないでしょうか。
特に、後述の
ハロウィーン文書を代表としたMicrosoftの悪行知る者達としては、どうしても裏があるようにしか思えなかったのでしょう。
MicrosoftのGithub買収
2018年6月、突然のMicrosoftのGithub買収でOSSコミュニティーは湧いていました。あのOSSを毛嫌いしていたMicrosoftが膝をくっした!と。
しかし、同時に不安もありました。Githubの作ってるAtomエディタはどうなるの、VS Codeに吸収されちゃうの(されちゃいました)?
Githubにあるレポジトリのライセンスは?マイクロソフトがいつでもゲットできるようになっちゃうの?など。
Githubの当時のCEO、Nat Friedman氏は当時
Reddit (
和訳記事)
という掲示板サイトでスレ立てして、そういった質問に答えていた。その中で、Atomに関しては今後とも開発を継続すると
約束していたし、
So we will continue to develop and support both Atom and VS Code going forward.
Atom vs Emacs vs Vim の三つ巴が永久に続くと思っていたのだが...
まぁ結局、VS Codeに吸収されちゃったみたいですね。
AtomはGithubが開発して、提供するツールなのにGithubの提供する
サービズがつかえなかったりといろいろバカみたいな事が起きてたみたいだし当然っちゃ当然か...
Githubが開発したのに、VSコードしかサポートしていない機能のなかでも一段とやばいのが
github copilot
公開レポジトリを使って機械学習させてプログラミングの支援をするgithub copilotは、ゆくゆくは有料のサービスとして提供されるようになるそうです。
サンプル数の都合で、ニッチな場合、元となったコードと同じ者が出力されるのにです。この場合
ライセンスなどはどうなるのでしょうか。
もしこれが許されるのであれば私だって
Ctrl+C
と
Ctrl+V
の間や
mv
コマンドを打った後に0.1秒自力での実装を考えてプログラミングしてるので、
クレジットを書く必要はないんだ,フェアユースなんだと言い張れる事になってしまいます。
OSSって、無料でつかっていいから、せめて10秒くらい時間をつかって、クレジットを明記しろっていうアカデミアの慣習がコミュニティの土台となってるのに、
それすら無視して金儲けに走るのかと虫酸が走ります。
GitHub’s parent company – has stated its future plans to commercialize Copilot as part of its Visual Studio products
Atomの開発停止、Githubにアップロードされ無料公開されているコードをベースにした有料サービス。さて、本当にMicrosoftはOSSに膝を屈っしたのでしょうか。
上記のような事が起きているのを見ると決っしてそうだとはいいきれません。
MicrosoftのOSS潰し戦略 -ハロウィーン文書 3EとFUD-
みなさんはMicrosoftのおはこEmbrace (包括し), extend (延長し), and exterminate (駆逐する)、通称3E戦略をご存知でしょうか。
これは
ハロウィーン文書とよばれる1995年の10月あたりから数年に渡って
リリースされたマイクロソフトの内部リーク文書とそれに対するエリック・レイモンド氏のコメント内で使われたフレーズです。
1990年代後半、マイクロソフトは、インターネットを通して拡大していくOSSという新に台頭する勢力に対して脅威を感じていました。
OSSは、頭こそないものの、体の部分部分は共通した規格で統一されている1代ソフトウェア群を成していました。
これは頭が規格を作り、その技術内容を秘匿し、頭の許したアプリケーションのみが胴体となる事をゆるす従来の開発と一線を画していました
(詳しくは
伽藍とバザールを100回くらい読んでほしい)。
とにかく語りきれないので、詳しく知りたい人は下記の二つの文章を熟読してほしい。
マイクロソフトは文書内で、新たに台頭してきたOSSにおけるソフトウェア開発と顧客獲得方法について詳しく分析している(ハロウィーン IIだったかな...)。
その中で、マイクロソフトはこの脅威に対抗すめになにをすればいいのかを分析している。その対抗策というのが3EでありFUD(Fear, Uncertainty, Doubt)なのである
3E -Embrace (包括し), Extend (延長し), and Exterminate (駆逐する)-
さて、まず1990年から2010年くらいまでのMicrosoftのマーケットでの優位性を維持するための戦略 3Eについて簡単に説明します。
- Embrace: まずは、業界を良く知り、顧客の欲しい物を見極める。そして、マイクロソフトだけがそれを提供できるのだと信じさせる (その手段については次項で)
- Extend: 社外秘の独自規格てんこもりのシステムを開発し、顧客の願望実現を達成させる (意訳)。どっかの牛丼チェーンみてーなやりかたで。
- Exterminate: 独自規格でゴリゴリにして市場を確立したら、後は、リーダーシップを発揮して、Microsoftの提供するツールでなければみんながやってる事ができない状態にして、
次世代の技術体系を独占的に売りだしていく。
FUD -Fear (恐しく), Uncertainty (不確定だと), and Doubt (疑わせる)-
上記を達成するためのマーケティング戦略として、MicrosoftはFUDをあげています。
- Fear: 無料のソフトウェア?絶対裏があるし、無給の暇人ヲタクが作ってるやつなんて信頼できねーよ、などと煽りOSSへの恐怖心をうえつける
- Uncertainty: 上記に加え、本当に大丈夫なのか、どこの馬の骨かもわからんヲタクのつかった物が10年後にも残る確証があるのか?などと不確定性を植えつけ、自社のソフトに依存させる。
- Doubt: 他社や個人開発への猜疑心を煽り、子羊のように怯えた顧客を囲い籠む
開かれた社会とその敵
「開かれた社会とその敵」とは哲学者カール・ポッパーによる二次世界大戦時に書かれたファシズムを批判、解析する哲学書です。
その中で(私も本自体は持っているのですが全て読んだわけではないですが)、ポッパーは、ファシズムの原因の一つとして人間は元々部族のルールにしたがって生きている生き物で、
とりあえずルールにしたがって生きていれば安心できる動物だとしています(意訳)。ですが現代への移行時のキリスト教主義の終焉で人は部族単位のルール(キリスト教)を失なってしまいました。
思想の自由や人権という概念が生まれた物の人々は安定した思想を求めました。その混乱がナチスでありファシスズム国家を産んだらしいのです。
つまり、人間というのは自分で自分について、あるいは、自分と他社との関係性いついて常に思考する事になれていない。
だれかにこれが正しいといわれてそれに従って生きていく事が楽だという事が遺伝子レベルですりこまれているという事です。
そして、それが原因で大衆は全体主義に陥いってしまうとといているのです(もちろんそれだけではありませんが)。
ナチスドイツが行ったようなファシズムからの独裁主義への誘導と上記のMirosoftの市場独占戦略は非常に良くにていると思いませんか?
ポッパー自体は3EやFUDに直接言及こそしてないにせよ、似たような事には言及していました。
また、歴史的にみても、上記のような戦略が多くの人々を一つの思想へ誘導するのに最適だという事はソクラテスが処刑された昔から明かです。
「Microsfotの製品を使わなければ他社とビジネスできなくなる」という恐怖で個人(企業)の思考を停止させ、Microsoftの市場独占へ誘導する。
そうです。こういった企業や企業理念こそがOSSの開発者の(一部が)目標とする「開かれた社会」の敵なのです。
つまり、簡単に言えばWindows Edgeでカチカチしながら5chで「俺は1940年代の日本で絶対ファシズムに染まらないぜ」なんてイキったカキコしてるやつはまっさきにファシズムに染まっていくっちゅー事です。
Microsoftは変わったのか
結論から言うと変わってないかな。
まぁでも結局ハロウィーン文書内では、上記のFUD戦略はオープンソースコミュニティーには通用しないと書かれているんですね。
何故ならOSSは別にそれをマーケティングして市場独占を狙っているわけし、別々の成果物に対して使われているサービスやプロトコルが統一しているので、一つのゆらぎが全般に波及する事がない
(一つのOSSが危険なら全部が危険なのではなく、危険な形で埋め込んだ1企業が悪いからね)。などの点で、FUDを諦めるようにとハロウィーン文書では指摘しています。
この指摘が当たっているのは今ある様々な規格やプロトコルがオープンな事からも歴史が証明しているし、
3E/FUD戦略がOSSに無効だという解析があっても、結局FUDはその後何年も続けられたし、IEやdocの規格を見れば、3Eだってなんだったら今も続けられています。
windows subsystem for Linuxだって、Linux subsystem for windowsではないのは、きっと将来的にLinuxのカーネル周りに手を延して、独占していく布石のような気もするし。
Atomに話を戻すと、AtomのEmbrace - extend - exterminate はGithub買収 - Github関連のVSCodeの独自規格ガチガチの拡張機能 - Atomの開発終了 という形で見事になされました。
そして、Github Copilotというプロジェクトで、Githubにある有志によるソースコード達が盗用されはじめています。
まぁMicrosoftも企業なので利益を上げるためにいろいろやるのはしょうがないと思うんですけど、やり方が汚いですね。
まぁ別にMicrosoftだけではなくAppleだってやってるんですけどね。だからといってMicrosoftが許されるわけではありませんが (Appleの方がSwiftなどのアプリ開発の独自開発を明示的にやっているので隠れてコソコソやっている印象があるMicrosoftよりは好感がもてます)。
おわりに
おまえ、Microsoftアンチもいいけどいいかげんにしろよ。もしかしたらMicrosoftはとっくの昔に改心したかも知れないだろ!っと思っている人
もいるかもしれませんが、本当に改心したどうかはMicrosoftが潰れるまでわからないでしょう...
まぁもっと怖いのは、上記の事をググっても本当に厳密にサーチワードや検索期間を指定しない限りこういった情報がひっかからないって事ですよね。
インターネットは、情報を伝搬するための媒体が文章をベースにしたフォーラムやブログから動画や音声とそれに付随するコメントになってしまったので検索性が非常に悪くなってしまった...
でもほら、これを読んでMicrosoft依存はやめようって思った人もいるんじゃないですか?そう思った人は是非
Libre Officeや
vimなど、officeやVSコードよりも優れたOSSのソフトウェアを手にとってみてください。もちろん無料ですよ!
そして技術があれば開発を手伝ってみてください!
そういえば昔ずいぶんお世話になったSourceForgeってどうなったんだ???
開かれた社会とその敵、もう一度よまなきゃ...読むのはいいけど分厚くて肩痛くなるんだよなぁえ、その前に博論書けって?アーアーアー聞こえない
終劇(続くかも...)